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法定遺言事項(遺言に書くと法的効果があること)詳細解説

​ここでは一般には分かりにくい法定遺言事項について解説します。

​ 法定遺言事項は身分に関すること、相続に関する事項、身分に関する事項、遺言執行に関する事項、その他の財産の処分に関する事項等が定められています。

【相続に関する事項

相続分の指定または指定の委託(民法902条)

 民法では900条や901条において、例えば、相続人が配偶者と子一人である場合、それぞれの相続分は2分の1と相続分を定めています。の法定相続分は法律上の目安であり、遺産分割協議や遺言により変更することが可能とされています。遺言において各相続人の相続分を定めることを相続分の指定といい、同条において相続分を定めることを第三者に委託すること(指定の委託)もできるとされています。

遺産分割方法の指定または指定の委託(民法908条)

 遺産分割の指定とは、具体的に遺産を誰にどのように遺産を相続させるかという内容を指定するもので、相続分の指定と共に遺言内容の骨子になる部分です。例えば、相続財産中の不動産を換価して売却代金を分配する場合等が分かりやすい例と言えます。こちらも指定の委託ができるとされており、民法908条においては、更に相続開始から5年以内の遺産分割の禁止を定めることができるとされています。相続人の中に未成年者がいる場合や何らかの事情で遺産の分割を禁止したい場合は、同条により遺産の分割を禁止する文言を遺言します。

特別受益の持戻の免除(民法903条3)

 民法903条では、生前贈与のうち「婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与」や遺贈、死因贈与を特別受益と定めています。​​特別受益とは、通常必要な範囲を超えて受益しているという意味で、本来相続財産に加算すべきものとされる財産です。民法では最近改正が行われ、善意の場合、相続開始から10年前(相続税法上は3年前まで。)までの特別受益を相続財産に加算して遺留分の計算等を行うこととなりました。この相続財産に加算するという行為を持ち戻しといいます。持ち戻し免除の意思表示を行った場合は、持ち戻しが行われないこととなります。但し、遺留分を侵害することはできません。また、持ち戻し免除の意思表示は遺言書以外でもできます。

遺留分侵害額請求の方法の指定​(民法1047条)

 民法においては、遺留分(法定相続人が最低限相続できる割合)を侵害された者がその侵害額を請求できるのは、第一に受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。)、第二に受贈者(後に贈与を受けた者から)の順番で行えるとされています。この点、遺言書に、別段の定めをした場合は、請求できる受遺者の順序を指定できるとされています。ですから、特に遺留分の侵害請求から守りたい相続人や受遺者がいる場合は、遺言書に明記する必要があります。

相続人相互の担保責任の指定(​民法914条)

 民法911条から913条までの間に、遺産分割を行った後に、相続財産に瑕疵があったような場合、(分割をやり直すのが大変なので)相続人間でどのようにその責任を分担するかというルールが定められていますが、914条において、前三条の規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、適用しない。と定められていますので、金額の大きな相続財産に瑕疵がある場合等に備えて遺言書で担保責任の分担方法について定めることが出来ます。

【身分に関する事項】

未成年後見人の指定、後見監督人の指定(民法839条)

 未成年者を子に持つ場合、自身が亡くなり両親共にいなくなる状態になると後見人がいない状態となります。この場合、家庭裁判所が未成年者の後見人を選任する方法と、遺言により選任する方法あります。遺言により指定の無い場合は、家庭裁判所が選任することになりますが、自身の希望とは異なる選任となるかもしれませんし、裁判所指定での後見となり、選任された側の負担にもなります。そのため、未成年の将来に不安がある場合は、同条により、成年後見人の指定や後見監督人の指定を行うこととなります。

推定相続人の廃除および廃除の取消(民法893条)

 民法では892条において、「遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。」と定めています。廃除とは、相続権を失わせることです。そこで、遺言により上記に該当した場合は、遺言執行者を定めている場合は、執行者が家庭裁判所に相続人廃除の申し立てをしなければならないものとしています。

【遺言執行に関する事項】

遺言執行者の指定または指定の委託​民法1006条

​ 遺言は、遺言者の意志に基づき、遺産の分割割合や方法等を定めることができますが、実際に相続手続きに利用する場合は、遺言執行者を定めていない場合に、改めて法定相続人全員の実印を求められる場面等があり得​、また、相続人本人が遺言の内容を実現することが出来ない場合も想定されることから、遺言執行者を定めることが一般的となっています。近年の民法改正により遺言執行者の権限が強化明確化され、遺言の執行事務がスムーズに行えるようになりました。遺言執行者の指定または、指定の第三者への委託は遺言によってできることになっており、民法1020条までには遺言執行者の権利や義務等が詳細に規定されています。

【その他の財産の処分に関する事項】

遺贈(民法964条)

​ 法定相続人以外の第三者に遺産を無償で引き継がせることを遺贈といいます。遺言によってのみ行うことができます。包括遺贈と特定遺贈に分かれ、遺言書への記載の仕方により、効果が違ってきますので注意が必要です。

信託の設定(信託法3条2項)

 信託は財産を受託者に託し、受益者のために譲渡、処分、その他管理運用してもらうことです。商事信託や民事信託がありますが、遺言で設定する信託を遺言信託といいます。

信託法3条

信託は、次に掲げる方法のいずれかによってする。

2 特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分をする旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨の遺言をする方法

遺言で信託を設定するためには、対象財産、受益者、受託者、信託期間、信託財産の給付方法等を遺言の中で定めます。

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